MLM失敗体験談第三話。いざ始めると、思ったほどはおろか、全くうまくいかない。
第2話の写真を見ていただけたでしょうか?
あの異様な熱気と“成功者”の空気にすっかり飲み込まれていた僕は、ある思いを抱くようになります。
「この空気を、もっと多くの仲間と味わいたい」
そんな時に登場したのが、紹介者であるインフルエンサーが提案してきた、“5店舗購入ポジション作戦”でした。
「5店舗分を買えば一気に勝ち組に?」
MLMの基本構造をご存じの方にはおなじみかもしれません。
誰かを自分の“下”に紹介すると、その人が支払った入会金や商品代金の一部が報酬として自分に入る。
そして紹介の輪が広がれば広がるほど、その報酬もどんどん大きくなっていく。
この「5ポジション作戦」は、簡単に言えば自分の下に最初から4人(4店舗分)を並べるというもの。
ただし、その4人は誰かに紹介してもらうのではなく──自分で費用を全額支払う。
つまり、僕一人で5店舗分の代理店権利を購入したのです。
その結果、登録上は紹介者が4人増えた扱いになり、一気に初期ランクから2段階昇格。
上から報酬が降ってくる構造も整った状態になり、「これは一気に勝ち組スタートや!」と完全に舞い上がっていました。
「報酬表」が夢を見せてくれる
さらに拍車をかけたのが、“報酬体系のパワーポイント資料”です。
紹介人数と組織の広がりに応じて、どれだけ報酬が上がるかを図や表で丁寧に説明されていて、
もう完全に“夢のロードマップ”でした。
「このランクに到達すれば月収○○万円」
「この条件でボーナス○万円追加」
まるでRPGの成長表のような構成で、「ここまでいけば人生逆転やん!」と思わされる内容。
当時のトップランカーは月収2000万円とも言われていて、そんな数字が現実に見えてしまうような演出でした。
今お金が欲しいと思っている人は、本当にこういう話を聞かないで欲しい。
見せられているのは、“希望”だけ。
その裏にある「誰が損をして、その金がどこへ流れているのか」なんて、どこにも書かれていないんです。
そして、信じてしまったもう一つの理由
このインフルエンサーを、僕が信じてしまった要因がもうひとつありました。
彼女は、新宿・歌舞伎町の超有名ホストクラブに、僕たちを連れて行ってくれたんです。
しかも──全額奢り。
「なんでホストクラブ?」と思いますよね。
でも彼女はこう言いました。
「部下につけるならホストが一番。彼らほど、人を巻き込む力に長けた存在はいない」
このときの僕は、それを聞いて、確かに一理ある…と納得してしまいました。
人の心を動かすのがうまく、会話も巧み。
そんな彼らが“味方”になってくれたら、たしかに成功が見えてくる気がするんです。
もちろん、ホストを味方につけるにはハードルもあるけれど、**「一人でも仲良くなれればいけるかも」**と、希望を感じてしまった。
しかも、その夜の会計──
参加者はざっくり100人。
ホストたちもバンバンお酒を飲んでいた。
ざっと見積もって500〜1000万円クラスの支払い。
僕には逆立ちしても払えない金額をご馳走してくれた。
その所作や余裕にも、やっぱり心を惹かれてしまったんです。
「これ、自分にもいけるかも」と思わせる構造
そして極めつけが、“組織拡大の理想モデル”の提示。
「5店舗持っているあなたは圧倒的に有利です。あとは各店舗に2人ずつ部下を増やすだけ。
なんなら、1人でもOKです」
これを聞いた時、「それくらいならできそう」と思ってしまうんですよ。
誰かひとりでも、この事業に共感して味方になってくれたら、その人がさらに誰かを紹介して…
その“紹介の紹介”すらも自分の配下になっていく。
自分が動かなくても報酬が発生する仕組みが、自動的に整っていく。
理論上は、可能。
この辺、今自分が読んでも「いけるかも」と見えてしまって、怖くなります😱
(※もちろん会社が永遠に存続し続ければの話ですが)
どうでしょう?
「なんか、できそう」と思いかけたあなた──
ようこそ、僕と同じ“かもねき”候補の仲間入りです。
試してみた。でもバレてた。
そんな僕も、一度だけ友達にこの話をしてみたことがありました。
「これならいける」「これは本物や」と思った勢いで軽く話してみたのです。
──結果、大笑いされて、恥をかきました。
さらに、当時の僕はFacebookやInstagramで、タワマンではしゃぐ様子なんかも投稿していました。
「俺、ついに変わり始めたぞ感」を出したかったんでしょう。完全にイタいやつです。
後日、改心したあとに昔の友達に聞いてみたら、こう言われました。
「あいつヤバいわ、関わらんとこ」
そんなやりとりが、僕の知らないところで友達の間で広がっていたそうです。
直接勧誘しなくても、友達は離れていきました。
なぜか?
「こいつは完全に“養分”として踊らされているな」って、みんな気づいていたから。
僕の振る舞いは全部バレてた。
成功話が「毒」になるとき
インフルエンサーたちはこう言いました。
「私は何もしなくても、不労所得が入ってくるようになった」
きっと本当でしょう。でもそれは、あくまでその人の人生の話。
僕らには全く当てはまりません。
実際、その人の周囲にいた信者たちもその人ほどは稼げていませんでした。
そして彼らが口を揃えて言っていたのが、
**「ああなるには、“あの人みたい”にならないと無理だ」**というセリフ。
つまり、「何を言ってもついてくる信者」を作る必要がある、ということ。
影響力やカリスマ性、発信力。
そんなものを築き上げるには、時間も労力もかかるし、誰にでもできることではないんです。
だから僕は今、こう言いたい。
あの世界に軽い気持ちで手を出すな。
高額な入会金なんて、払っちゃいけない。
それが、人生をかけた僕の結論です。
「いい商品なら成功する」…本当に?
僕は当時、メーカーでエンジニアとして働く中堅選手。
現場仕事ではそれなりに評価もされていましたが、ビジネスや経営の知識はまったくありませんでした。
そんな僕に良い商品が目の前に現れたとき──
**「こんなに良いモノ、成功するに決まってる」**と思ったんです。
だけど現実は違いました。
商品が良くても、売れるとは限らない。
むしろMLMでは、“売れる仕組み”を自分で作らないといけない。
でも僕は、「モノさえ良ければ勝手に売れる」と本気で思い込んでいました。
僕には、友達を誘えなかった
このMLM以外にも、僕はいくつか似たような構造の話に関わったことがあります。
だけど、一度も友達を本格的に勧誘できたことはありませんでした。
なぜかって?
友達には僕が「やばいことを始めたやばいやつ」としか見えていなかった。
で、全くその通りで、結果も出ていないのにさも「成功」を手に入れたように演じているのがわかりやすくばれている。
そうはいっても、後に引けなくなっていた僕は、後にこの違和感に気付いても治せなかった。
後にお世話になった方々も上記のような振る舞いでしか、人を集めれていなかったし。
まあ、それでも集めて勧誘でき切っているインフルエンサーもいたのは事実。
だけど僕にはどれだけ真似をしても、友達がどんどん居なくなっていきました。。。
魔法のセリフなんて、なかった
この頃になると、僕を引き込んだインフルエンサーはすでにトップランクを3つ分獲得していました。
「この人、何を言って、どんなふうに人を動かしてるんだろう?」
そんなことばかり考えるようになっていました。
たぶん、MLMで成功を目指す人なら、一度は思ったことがあるはずです。
──魔法のセリフがあるんじゃないかって。
実際、僕も“成功者”の投稿やスクリプトをそのまま真似してみたことがあります。
でも──結果はまったく出ませんでした。
なぜか?
「何を言うか」ではなく、「誰が言うか」だったんです。
発信力も信頼もない僕が何を言っても、響かない。
それは、今となってはよくわかります。
それでも──気づけなかった僕
今読み返しても、「理論上はありえなくもない」と思えてしまう構造。
だからこそ、怖い。
だからこそ、みんな騙される。
でも、当時の僕にはそれが見えなかった。
そして、MLMから破滅へ向かう僕には、そんなことに気づく由もなかったんです。
次回・第4話へ続きます。
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