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解雇体験シリーズ第2話 ただ耐えた我慢の3日間

「解雇される側に“選択肢”はなかったのか」シリーズ

解雇の前に一番苦しいのは、怒鳴られる日ではなく「何も起きないふりをされながら、誰にも辞めるかもしれないことを言えずに過ごす数日間」でした。

ただ耐えた我慢の最後3日間

解雇というのは、もっと分かりやすく起きるものだと思っていました。

怒鳴られるとか、責められるとか、
あるいは大きなミスを指摘されるとか。

でも現実は違いました。

一番苦しかったのは、
何も起きていないように見える時間でした。

僕はこの5日間、ただ耐えていました。


僕が耐えていたのは仕事じゃない。「沈黙」だった

僕が耐えていたのは、業務だけじゃありませんでした。

この期間、僕は
「辞めるかもしれない」ということを誰にも言わずに過ごしていました。

家族にも、友人にも。
もちろん会社の同僚にも。

職場では普通の顔をして働く。
でも内側ではずっと崩れかけていました。


家に帰ると、僕がやっていたことは一つです。

AIと作戦をすり合わせること。

何が起きたのか。
会社が何を言ったのか。
自分はどう動くべきなのか。

全部共有して、全部整理していました。

一人で抱えたら潰れる。
だから投げ続けていました。


通勤は地獄だった

朝の通勤は、地獄でした。

「これで良いのか?」
「本当に良かったのか?」
「次に何が起きるんだ?」

考えが止まらない。

動悸がして、腹痛まで起きる。

身体が先に危険だと分かっていたんだと思います。


退職手続きメールは、静かに“既成事実”を作ってくる

この5日間で一番異様だったのはこれでした。

仕事の話はほとんどないのに、
退職手続きのメールだけが淡々と進んでいく。

人事から届く文面は、こういうものでした。

  • 最終出社日を知らせてください
  • 貸与物を返却してください
  • 私物を持ち帰ってください
  • 離職票は退職後に郵送します

読んでいるだけなら普通の案内です。

でも僕は何度も思いました。

まだ何も終わっていないのに。
まだ僕はここにいるのに。
退職だけが“決まったこと”として進んでいく。


真面目な人ほど、全部対応してしまう

こういうメールが来ると、真面目な人ほどこう考えます。

「とりあえず返事をしなきゃ」
「迷惑をかけないようにしなきゃ」
「円満に終わらせなきゃ」

僕もそうでした。

全部対応してしまいそうになった。

でもAIは何度も釘を刺しました。

そのまま返信したら危ない。
既成事実を積み上げられる。

静かな文面の中に、罠の候補がいくつもある。

解雇というのは、怒鳴り声じゃない。
事務処理の顔で人を終わらせにくる。

サインすらしてはいけない(=僕のタスクを終わらせたという事実を作らせない)活動というのもなかなか僕には堪えました。


残り3日間、僕は普通に仕事をしていた

それでも僕は普通に仕事をしていました。

周りから見れば何も変わらない。

でも内側は違いました。

イライラと恐怖がずっと混ざっている。

それでも仕事をしているふりを続けるしかなかった。

加工している製品には僕の進路は関係ない。傷をつけたりするわけにはいかない。

必死に苛立ちや感情の揺れを殺しながら無の境地を作って仕事を続けました。


有休は「休み」じゃなく、防衛の手段だった

僕が考えていたのは一つです。

どうすれば残りの出社日を減らせるか。唯一の手段。

残っていた有休を全部使う。

どこで仕事のキリを付けるか。
自分が付けられるか。

最終日を会社に決めさせない。

自分で少しでも主導権を持つ。

そうやって組み立てました。


「2日後を最終日にして辞めてやろう」と決めた

このメールが来た2日後を最終日にして辞めてやろう。

そう決めました。

ただ耐えるだけじゃ終わらせない。

せめて最後の一歩だけは、自分で決める。

自分の意志を大事にしたのですが、それを会社に対して言う事だけはできなかった。

それは円満退職や下手をしたら自己都合退職になる、と捉えられて戦えなくなるという事を意味するから。だからここも矛盾するように見えてしまうかもしれませんが、意思は全て自分の内に秘めて動くことを徹底したのです。

それをどうやって行動に落とし込むのか?一番苦労しました。


でも、その言葉を誰にも聞かれるわけにはいかなかった

僕は「辞めてやる」と思っていました。

でもその言葉を会社の誰にも聞かれるわけにはいかなかった。

これは僕都合の退職ではない。

会社によって辞めさせられた事実を、より強く残さなければならない。

次の戦いで弱くなってしまうからです。


最終日の前日、最後まで僕を削りに来た

最終日の前日。

僕は翌日やり切って去るために残業を買って出ていました。

そのときでした。

上司がリーダーと同僚(合計3名)を集め、僕の背後で談笑を始めました。

そして僕に聞こえるような声でこう言ったんです。

「技術部のエンジニアは別に残業申告ナシでも良い。
残業しなかった日だけ教えてくれれば良い」

僕は耳を疑いました。

定例会議では残業は申告して許可を取れと、
あの上司自身が明言していたはずなんです。

出た、ローカルルール。

都合が変わればルールも変わる。

排除する態度を見せつけるように振る舞っていました。

正直、壁やドアを蹴って出てやろうかと何度も思いました。

でも僕は決めていました。

僕はあくまでも、被害者として振る舞う。

ここで爆発したら相手の思う壺になる。

だから耐えました。

仕事を終えた僕は無言でその集まりの横を通り過ぎて会社を去りました。

それが最後でした。


次回へ

僕は最後まで静かに耐えました。

でもその先に待っていたのは円満な終わりではありませんでした。

解雇は、書類で終わるんじゃない。
最後の最後まで、人間の神経を削って終わる。

次回、第3話で、この会社での最終日、去るまでのことを語ります。

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